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5月24日20時3分配信 ロイター


 [東京 24日 ロイター] 欧米市場でM&Aの機運が一段と高まっているのとは対照的に、メガバンクを頂点にした大手邦銀に「買収されるリスク」への緊張感がみえない。時価総額で欧米大手銀に遅れを取っているにもかかわらず、目立った改善策が大手銀から打ち出される兆しはない。金融市場の一部では「銀行経営者には買収されることの危機感がなさ過ぎる」(銀行アナリスト)との指摘も出ている。
 <低すぎる邦銀のROE、買収されない大きな要因に>
 23日まで続いた大手邦銀グループの2007年3月期決算発表会見で、各グループの首脳らからは「海外から買収攻勢にさらされる可能性はほとんどない」との楽観的な見通しの表明が相次いだ。
 欧米の金融機関が日本の大手銀行グループの買収に乗り出す際、大きなハードルと指摘されているのは、15%弱にとどまるROE(株主資本利益率)の低さだ。みずほフィナンシャルグループ<8411.T>の前田晃伸社長は会見で「メガバンクは買収の対象にならないと思う」と述べた上で、その理由について「ROE20―30%をターゲットにしている外国の金融機関が、日本の金融機関を買収するとROEが下がる。株主が許してくれないだろう」と説明。低水準の経営データは誇れる要素にはなりそうもないが、図らずも「買収防衛策」になるという皮肉な構図だ。
 大和総研の銀行担当アナリスト、高井晃氏も「(海外の金融機関が)買収しても収益性が落ちるだけ」と述べ、欧米の金融機関が邦銀買収に出てくる可能性はないとの見方を示す。
 欧州ではオランダの銀行大手・ABNアムロをめぐって、英銀行大手のバークレイズと同ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)が争奪戦を展開している。高井氏は「欧州での金融機関の経営統合はリストラ効果が発揮できるが、欧米の金融グループが邦銀を買収してもその効果はない」とする。

 収益性の低さが防衛策になっているとすれば、裏を返せば、収益性さえ上がれば大手邦銀にも買収の触手が伸びる可能性がある。ある外資系証券の銀行アナリストは「規制緩和を背景に金融コングロマリット化が進み、証券業務などの収益性の高い業務の比率が伸びてくれば、ROEを上げることは可能」と指摘し、「そうなれば外資からの買収可能性がないわけではない」と語る。
 <M&Aの行方を左右する時価総額の規模>
 バークレイズがABNアムロに提示した買収価格は約10兆円。時価総額11兆2000億円のバークレイズが時価総額でわずかに下回るアムロを買う構図となっている。
 5月23日時点の世界の銀行時価総額ランキングをみると、邦銀勢は三菱UFJFG<8306.T>が14兆8000億円で8位、みずほFGが9兆5000億円で23位、三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>が8兆6000億円で24位。1位のシティグループの時価総額は32兆9000億円だ。
 三菱UFJの畔柳信雄社長は会見で、欧州での金融グループの統合の動きの背景に時価総額で遅れを取ることに対する危機感があるとの見方を示した上で「(UFJとの)統合を決めたのは、その時代をにらんでの対応だった」と語った。現在の時価総額の水準については「(買収される)可能性はまったくないわけではないが、そんなに簡単なことではないだろう」と説明した。
 <時価総額で邦銀大手を追い抜いた中国の銀行>
 時価総額ランキングで急速に存在感を発揮しているのは、昨年から相次いで香港市場に上場を果たした中国勢。不良債権問題を抱えているとの懸念がぬぐえないものの、中国工商銀行<601398.SS>や中国建設銀行<0939.HK>、中国銀行<601988.SS>の3行が10位以内に顔を出している。
 ある投資銀行幹部は「日本勢が買収の脅威にさらされるとすれば、もはや欧米系の金融グループではない。そう遠くない将来に、中国の銀行から買収提案を受ける可能性がある」と警鐘を鳴らす。畔柳社長も会見で「中国の銀行が一挙に時価総額を上げてきていることを考えれば、もう大丈夫だとかではなく、常にグローバルをにらんだ経営をする緊張感が必要だ」と語り、警戒感をにじませた。
 ある大手証券の銀行アナリストは「金融危機時には株価低落が経営危機に直面したため、マーケットを意識していた。今はすっかりその緊張感を忘れている」と指摘する。08年3月期決算見通しでも、配当性向は低い伸びにとどまったまま。増配による株価上昇は、時価総額の増大にもつながり、結果として買収防衛策にもなる。
 しかし、大手金融グループが掲げるのは中期的に配当性向を20%程度にまで高めるとの目標だ。配当性向が30―40%にもなる欧米有力銀行はもちろん、日本の上場企業の平均配当性向約23%にも到達していないのが現状だ。


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